犬 訓練士

週1回のペースでランの訓練をお願いしているトレーナーの二階堂さん ( どっぐはぁと ) にしつけに関するインタビューをしました。
文中に出てくる小林さん ( 三ツ柏ドッグスクール ) は彼女の師匠であり、ホームステイでランのパピートレーニングや、私もしつけや訓練のことに関してお世話になっている方です。
このインタビューを通して皆さんのしつけに関する考え方のサポートが少しでもできれば幸いです。

2006年7月9日

ドッグトレーナー ( 訓練士 ) になった理由

二階堂さん :

もともと、ブリーダーさんから譲ってもらった自分の犬 ( アメリカンコッカースパニエル ) がものすごい問題犬でした。
しつけはスパルタという意識があり、簡単に行くと軽く考えていました。しかし実際にはなかなか上手く行かなくて。特にアメリカンコッカースパニエルはむずかしい犬種。「噛む」、「吠える」、「唸る」、そういう状況でノイローゼになりそうにもなって。だから、今でも皆さんの気持ちは良く分かります。
本やネットでたくさん勉強をし、訓練所を回ったりしてなかなか納得のいくところがありませんでした。そんな時に小林さんに出会いました。小林さんのところに弟子入りし、しつけ・訓練、犬のことについて学びました。今は、自分と同じ問題を持った人の手助け、1頭でも多くの犬が幸せになれればと思っています。

しつけの必要性

饒村 :

しつけをまったく行わず犬を飼ったらどうなりますか?

二階堂さん :

「しつけを行わなかったら、人と犬がものすごくストレスを抱えて生活することになります。そして生活の中でいろいろな問題が出てきて、人も犬も不幸な結果になっていくと思います。」

しつけと訓練について

饒村 :

私はしつけは、犬の社会科、人と犬のより良い生活のために学ぶべきことで、その子の感受性を伸ばすことであったり、人と生活して行く上で学んでほしいトイレのことであったり・・・、逆に訓練はコマンド等の命令に従った行動だと思います。
訓練は最低限、「スワレ」、「マテ」、「コイ」ができればある程度、愛犬を危険から救うことができます。ただ私はランとの訓練が大好きで、訓練を通してお互いの主従関係を強めていければと思っています。

二階堂さん :

しつけは人と犬の一緒の生活の中で問題が出てこない様にするものです。逆に訓練はコマンドで、人の命令によって犬が動くようにするものです。
しつけと訓練の兼合いと言うのは難しくて、家庭犬の場合「イケナイ」と「ヨシ」と「オイデ」ができれば他には何もいらないかもしれません。けど犬にはいろいろな子がいて、興奮しやすい子であったり、自己主張の強い子であったり。例えばそういうワンちゃんは「スワレ」や「フセ」が出来る事によって興奮度を下げて、飼い主さんの言っている事を聞きやすい状態にしてあげる事が出来ます。その手段としての訓練やコマンドは必要だと思います。実際に、自分のテンションをコントロールできない子がたくさんいて、訓練を入れることで、人と犬とのよりよい関係が生まれます。訓練をすることによって、いい関係が出来て、訓練を犬が楽しむようになってきます。要するに人と犬とのコミニケーションを良くする為には必要なものだと思いますし、あえて、しつけと訓練を意識して分ける必要は無いと思います。

饒村 :

たしかにそうですね。ランはすごくテンションが高いので、私もランに訓練を入れていることでいい関係が生まれています。
ところで、二階堂さんがお世話している方は、しつけと訓練の割合はどのくらいですか?

二階堂さん :

90%以上がしつけ(犬との生活の中で問題が生じる事)です。と言うのは饒村さんのようにパピー訓練からお願いしてくる飼い主さんは本当に少ないんです。皆さん何かしらの問題を抱えてかなり困ってからお願いしてくる方がほとんどです。
ただし訓練(号令に対する犬の動き)を教える場合も、犬が楽しく自発的にやるように教えていければと思っています。家庭犬の場合は警察犬のような強制的な訓練はやりたくないと思っています。

しつけ ( 訓練 ) の観点からの犬の特性や行動学についての考え

饒村 :

いろいろなトレーナーさんがいますが、皆さん犬に対する行動学や理論をお持ちだと思います。
二階堂さんはどういった考えを持っていますか?

二階堂さん :

犬は群れで生活する種であり、人間の生活と似ています。だからこそ人と一緒に生活する事が出来るし、感情もある動物ですから、犬の行動学を利用して人間が犬にしつけを教えていかないといけない。行動学をしらないと間違った育て方をしてしまいます。
また、よく褒めるだけのしつけというものもありますが、私達訓練士であれば時間をかけて犬に教える事は出来ますが、飼い主さん自身がやろうと思うと、気が遠くなるような時間と労力が必要だと思います。ある程度は叱るしつけも必要です。

饒村 :

確かにそうですね。自分も一日中一緒にいる事ができれば、褒めるだけのしつけも出来る自信があります。
けど、きちんと叱ることも重要だと思います。人間だって悪いことをしたら叱りますしね。ただ叱った分以上に、良いことをしたら、たくさん褒めて、そして常に愛情をもって犬と接することが重要ってことですよね。

しつけ ( 訓練 ) に対する飼い主の考えと犬への接し方

二階堂さん :

まず、現状のほとんんどの方が、悲しい事に犬を飼う事の大変さの認識がかなり低いという点。簡単に考えている方が本当に多いです。さらにそれに輪をかけて、ペットショップ等も「犬の飼い方の重要性」の説明が無く、甘い言葉で簡単に犬を売ってしまう日本の現状があります。犬を育てていく上でのしつけの現状として、「ものすごく困った・・・」「手に負えない・・・」と依頼してくる人が本当に多いです。
今の日本のしつけのスタイルは本当に本当に飼い主さんの力ではどうしようも無くなってから、初めてしつけ・訓練の依頼が発生するというのが現状です。けれど本来しつけというのは「飼い犬の将来が、困った、どうしよう」という事が出てこないようにする為に小さい頃(パピー時期)に教えていく事が本当のしつけのスタイルだと思っています。その辺りが日本と欧米ではすごく違います。
飼い主さんには、自分の犬の事と犬のしつけの重要性をもっともっと理解して頂きたいと思います。
一般の人が思っているしつけや訓練に対する見解も間違っていて、「犬をお利巧さんに仕込んでください!」状態でまかせっきりな場合が多いです。多くの方が、犬を私達のようなトレーナーに預ければ、「お利口さんになって帰ってくる!」と思っている現状があります。
犬にも感情があるし、相手をする人によって態度を変える賢い動物です。だからこそ飼い主さんと犬の信頼関係が重要なんです。
私達訓練士がすべき事とは、本当は犬を良くする事では無く、「飼い主さんとワンちゃんがどれだけ良い関係になれるか」をいかにサポート出来るかという事だと思います。いくら、犬を訓練しても、飼い主さんがワンちゃんを扱えるようにならなければ意味がありません。

饒村 :

正直、私も飼い始めた時は、預ければお利口になって帰ってくると思ってました。けれど今では、それ以上に私と愛犬の信頼関係が重要だと思っています。そして技術的なことや知識も、本やインターネットで沢山学んだけれども、そういった知識では埋めがたい部分を小林さんや二階堂さんから学ばさせてもらっています。

最低限必要だと思われるしつけ ( 訓練 )

二階堂さん :

人間社会の中に出て行った時に、人や周囲に迷惑をかけない、人間の生活に馴染んでいるかどうか、順応して犬も生活が出来ているかどうか?いざと言う時に飼い主さんの言う事を聞くかどうか?という点ではないでしょうか。もし、それが出来ない場合はワンちゃんが飼い主さんの言う事を聞けるような良い関係を作れると良いですね。

しつけのコツ、ポイント

二階堂さん :

まず、犬には個体差があります。しつけの本買って読んで、そのまま実践しても上手く行かないことが多いです。その子の性格や犬種のタイプを理解することから始めた方が良いと思います。この子はどういう叱り方が合っていて、どういう褒め方だと嬉しそうにするのか?など、まずは、よーく犬を知る事です。

犬の現状について

饒村 :

最後にしつけとは関係ないのですが質問をさせてください。
全国で「処分された」犬が約16万頭もいる日本の現状、さらに保健所での処分方法が「安楽死」ではなく炭酸ガスによる窒息死であるという事実、処分されているのはほとんど元飼い主がいた子であることなど、自治体によって異なりますが即日〜5日で殺されてしまう事実について二階堂さんはどう考えますか?そして私達は何をしていけばいいと思いますか?

二階堂さん :

今の飼い主さん、そして、これからワンちゃんを飼い始めようと思っている飼い主さんの見解を変えていく必要があると思います。飼い方の考え方を。本当に犬を飼える生活なのかどうか?(犬に時間をかけてあげられる生活なのかどうか?(人間の生活を教える時間はありますか?)本当に犬を飼える環境なのか?)犬を飼う前にもう一度考えて頂きたいなと思います。命ある生き物ですし、犬は飼い主さんを選べません。保健所に行く人生(では無く、犬生?)なのか、最後は大好きな家族の温もりの中で幸せいっぱいで天国へ行くのか?その子がどんな一生を過ごすのかは、全て飼い主さんで決まってしまいます。
私達訓練士は、一人でも多くの飼い主さんに、もっと犬という生き物を理解してもらえるように言い伝えていく事。(犬を飼う事がそんな簡単な事ではないという事)
私個人的は事ですが、できればボランティアの方もやりたいと思っているんです。将来的に聴導犬であったり、介助犬のボランティア活動をしてきたいと考えています。

饒村 :

聴導犬と介助犬ってどういうことをするんですか?

二階堂さん :

聴導犬は耳の聞こえない人の手助けをするんです。例えば、目覚ましの代わりになってあげたり、音に対して導いてあげたり。介助犬は体の不自由な人の手助けをします。実は盲導犬の組織は犬が少ないという現状はあるけど、だいぶ確立されてきています。けれども聴導犬や介助犬はまだまだなんです。そして現在、聴導犬で活躍する犬は捨てられたミックスの子だったりするんです。ミックスの子は頭がよく性格のいい子が多いんです。日本の犬を捨てれるという事実はよくないし、まずはその部分を変えていく必要はあると思うけど、こういった活動で不幸な犬を減らしていければと思います。
そして、皆さんに関しては犬に対する意識の改革と、あと犬の現状を知ることです。

饒村 :

そうですね。まずは多くのいろいろなところから情報を得て知ること、そして関心をもつこと、そして小さくても少しづつ行動していくことが重要だと思います。お互い頑張りましょう!
今日はいろいろとインタビューに答えてもらいありがとうございました。